1991.1.30/once in the Blue Moon

今宵は満月。
冬の夜空に浮かぶ月はどこかキンとして冷たい感じがする。
でもそれが何となしに青く見えるのは
今月二度目の満月だからだろうか。

同じ月に満月が2回ある場合、その2度目を
Blue Moonというそうだ。
月の満ち欠けは約28日周期だから
それとリンクしている太陰暦とは違って
今の暦では計算上は起こりうることだけど
それでもめったに無いということは確かだ。
だからなのだろうか、英語でonce in the blue moonといえば
「滅多に無いこと」「決してありえないこと」という意味になるらしい。

真冬だというのにベランダに佇むあたしの手にもBlue Moon
菫色をしたカクテルは撩行きつけの店のバーテンダーから教わったもの。
なぜかあいつはシェイカーなどの道具一式を持っていて
時折依頼人の前で格好つけて作ってみたりする。
あたしは撩みたいに巧くできないけれど
いいの、どうせあたし一人が飲むものだから。

XYZに「もう後がない」という意味があるように
何らかの意味が込められているカクテルがある。
このBlue Moonもその一つ。
いくつかあって、「完全な愛」「叶わぬ恋」そして「できない相談」。
完全な愛、ってのはおおよそあたし向きではないわね
忍ぶ恋こそ真の恋、っていうのであれば別だけど。
きっと、あたしにとってのBlue Moonは「叶わぬ恋」
だって叶いっこない、この想いは
あたしは撩のパートナー、それ以上でも以下でもないもの。

カクテルの意味を教えてくれたのはバーテンさんだったけど
Blue Moonの意味そのものを教えてくれたのは撩だった。
あたしは――撩が好き。
だけど、この想いは伝えられない、伝えられるはずもない。
撩があたしを抱きしめてくれるはずもない。
もしそんなことが起こるとしたら――once in the blue moon
「決してありえないこと」

だけど目の前にはBlue Moon
青い月の光を浴びれば奇跡が起きるかもしれない
撩があたしのことを抱きしめてくれるかも――
抱きしめてくれないのならあたしが抱きしめればいい、撩を
彼が帰ってきたら、そっと部屋に忍んで行って
そうしたらこの想いを受け入れてくれるかもしれない
青い月の夜の、たった一夜の奇跡として。

だけど撩はあいにく、この満月に狼と化したのか
夜の街を徘徊中。
きっと今頃、他の女と――想像もしたくない、本当は。
カクテルBlue Moonのもう一つの意味、「出来ない相談」
つまりは「あなたとは付き合えない」というスマートな断り方なのらしい。
もしあたしが忍んで行っても、あなたは「出来ない相談」と笑うだろうか
それとも――

空には満月
ただ今月二度目というだけの、いつもと変わらない満月。

TUBE Once in a blue moon 歌詞 - 歌ネット