2018-01-01から1年間の記事一覧
相棒の成長は、組んでる側としても嬉しいことではある。 けど――「いやぁ、香ちゃんのおかげだよ」 「帰ったら香さんによろしく言っといてね」そんな声をあちこちで聞くたびに 無性に腹の中がもやもやするというか――今ではすっかり、出入りのヤクザを追っ払う…
そのとき彼らは、テレビが映し出す惨状に目を奪われた ――そのうち一人は視力を失って久しかったが 見えていた頃の習慣と、正面を向いた方が よりそこから聞こえる音をはっきり耳にすることができる という理由からだろう。昼下がりの、喫茶店にとってはそれ…
――ぎゃあ、ぎゃあ 赤ん坊と“聞き紛う”ような声が外から響く これが本物の赤ん坊ならどれだけ良かったことか だが春先のこの時期はそうではない。 それがいつもの猫の鳴き声以上に俺の嫌悪感を掻き立てるのは 天敵が今以上に殖える合図だから、というだけでは…
日本の男性とアメリカ人との違いはいろいろあるけれど そのうちの一つが「男子、結構厨房に入る」ということだろう。 ハリウッドのロマンティックコメディでは、よく 男女がキッチンで並んで一緒に料理を作るようなシーンがあるけれど それが私たちカップル…
人探しなんてスイーパーの仕事じゃねぇ、ってのは いったい何年言い続ければ判ってもらえるのだろうか。 それでもまだ美人探しならモチベーションも上がるが その前に「将来の」が付いてもなぁ…… 本当に美人になるかどうか保証は無いだろうし。けれども10代…
いまはただ 思ひ絶えなむ とばかりを 人づてならで 言ふよしもがなアスファルトを叩くように降りしきる雨が 血の跡を洗い流していく。 こんな嵐の夜ではなかったら、きっと ヘンゼルとグレーテルのパン屑のように 地面に残る赤黒い染みを追っていけば 容易に…
高砂の をのへの桜 咲きにけり 外山のかすみ たたずもあらなむ見上げれば桜の花が満開を迎えようとしていた。 見慣れたソメイヨシノよりやや小ぶりのその花は 花弁の端に行くにしたがって、グラデーションのように 淡い薄紅が次第に濃さを帯びてくる。その様…
ニワトリが先か卵が先かという喩えがあるが 言葉に関して言えば、その言葉が指し示す 物なり現象なりが先にあって 後追いでその名がつけられる というのがほとんどだろう。なので「マリッジブルー」という言葉が生まれる以前から 結婚を前にした男女はあれこ…
ティータイムのお客が去って、一息ついたCat's Eye 今はカウンターにいる香さんとひかりちゃん その横にちょこんと座っているうちの鴻人だけ。 溜っていた食器洗いも片づいたし わたしもようやくコーヒーの一杯も飲めそうだ。 何しろ、今日は寒かったからか …