お子ネタ

終わりのない傾き

人探しなんてスイーパーの仕事じゃねぇ、ってのは いったい何年言い続ければ判ってもらえるのだろうか。 それでもまだ美人探しならモチベーションも上がるが その前に「将来の」が付いてもなぁ…… 本当に美人になるかどうか保証は無いだろうし。けれども10代…

【72/hundred】たたずもあらなむ

高砂の をのへの桜 咲きにけり 外山のかすみ たたずもあらなむ見上げれば桜の花が満開を迎えようとしていた。 見慣れたソメイヨシノよりやや小ぶりのその花は 花弁の端に行くにしたがって、グラデーションのように 淡い薄紅が次第に濃さを帯びてくる。その様…

2000.2/それが あたしだから

ティータイムのお客が去って、一息ついたCat's Eye 今はカウンターにいる香さんとひかりちゃん その横にちょこんと座っているうちの鴻人だけ。 溜っていた食器洗いも片づいたし わたしもようやくコーヒーの一杯も飲めそうだ。 何しろ、今日は寒かったからか …

やっぱり赤は似合わない

一応自分にも贔屓の球団ってのはあるが どこかの誰かほど何連敗したからって この世の終わりのように落ち込んだりはしない。 だからもちろんチームが何連勝しようと それが二桁に伸びようと頬を緩めたりはしないのだが――「ほーっ」何でオレが鏡の前で西武の…

2017.5.20/Heart Break Cafe

最近ヒカリの様子がおかしい。 といってもいくら幼馴染みの父親とはいえ オレとあの子の付き合いは今やほぼ 「お向かいさん」ということに尽きてしまう。 だからせいぜい街で偶然見かけるか 行きつけのカフェで行き会うかぐらいなのだが ここ数日、ずっと表…

Delivery Boy, Delivery Girl

炊飯器が炊き上がりを告げる音でふっと我に返った。事の発端は今日の昼間、Cat'sでのやりとり 美樹さんに少し元気が無かったのが気になった。 聞けば、最近お店に通い始めたマダムの 不躾な一言がきっかけだったとのこと。「帝王切開だと母性が足りないなん…

究極のトースター

新宿駅東口の伝言板まで依頼が無いか見に行くのは ママの仕事でもありパパの仕事でもあり あたしの仕事でもあったり、要は 「見に行ける人が見に行く」ということなのだが その日たまたま見に行った帰り、 駅前の某大型家電量販店から 荷物を小脇に抱えて出…

1994.11/プレママとプレパパと果物と

ピンポーン 「はーい」 《カエル急便でーす》インターホンに呼び出されるままにほいほいと 玄関先に向かうあいつの危機感の無さに 溜息をつきたくなるのはいつものこと。 わざわざ制服を着て襲いに来る奴もいるというのに。 もっとも、玄関といってもエレベ…

blind faith

ちょっと学校でいろいろあった。 でもそれは毎度のように、ひかりのヴァイタリティ溢れるお節介と それを背後からクールに突っ込む秀弥の鋭い洞察で見事解決。 これがオレたち生徒会の日常業務みたいなものだけど こんなことが続くと少々考えずにはいられな…

SKULL LEADER

平日も休日も、正直なところ この店には関係なかったりする。 もちろん客層は異なってくるけれども 「いつもの面々」に関して言えば相変わらずで もっとも、その半数以上がカレンダーどおりには いかない仕事というのもあるけれども。一方、カレンダーに雁字…

教育的配慮

この仕事は依頼人を家に泊めることも多い というかほとんどだ。だからひかりが生まれてからは そういうときは、あの子を美樹さんや教授のところに 泊りがけで預けて面倒を見てもらっていた。 でも今はケースバイケース、さほど危険が無さそうな場合は 家でひ…

1994.11/Mommy Track

そろそろ、通りによっては吹く風に混じって 金木犀の薫りが漂ってくる季節だが 日が落ちると、それでも人通りの多い歌舞伎町ですら 人恋しいほどに寒さの募る今日この頃。 ここ最近は荒い風に当てないようにしてきた香を わざわざ寒空の下に引っ張ってきたか…

1995.7.7/Milky Way

「たっだいまぁ、と」夕刻、日頃の「お出かけ」から帰ってきても まだこの時期は部屋の電灯を点けるまでもない。 だが、暮れなずむリビングで香がぼぉっとした表情で ソファに座っていたら一瞬ぎょっとするはずだ。「ど、どぉしたんだよ、おまぁ」 「あ、り…

1995.5/ファースト・コンタクト

これは純粋に自分のエゴだったのかもしれない。 香に子供が生まれるのに合わせて育児休暇を取った 当然、自分の子でないにもかかわらず。 自分の息子の世話も妹に任せきりだったのだ。 いくら彼女にとって可愛い甥であっても 初めての我が子だ、しばらくは水…

愛と戦争は総てが平等

ひかりと秀弥を夜の歌舞伎町で見かけても オレは不審に思わないだろう。 確かに二人はまだ未成年で本来そんなところに そんな時間にいてはいけないはずだが ひかりは小さい頃から冴羽さんに連れられての 夜遊び歴=年齢の強者だし、秀弥は そんな彼女の(父…

もしそこに彼らがいたなら

放課後、伝言板を見に来たら変な男が目についた。 一見、気配を隠しているようでいて 「俺は今ミッション中なんだぜ」感が見え見えで TVでよくやっているガチ鬼ごっこゲームでは 自信満々でいて真っ先にハントされてしまうような。 どうせ張り込むんだった…

1995.5/いらかの波と

こどもの日、古い言い方をすれば端午の節句でも こうビルが立ち並ぶ都会では鯉のぼりどころではないと 旧友がぼやいていると、仲間内では唯一の一戸建ての 元傭兵の喫茶店主が太っ腹にもポールを貸し出すと言ってきた。 おかげでCat'sの頭上には鯉のぼりが3…

way of the beast

「……どうしたの、撩?」なんてあいつが怪訝な顔をして訊いてくるのも当然だ。 部屋に入ってくるなり、半ば力の抜けたように どっかりとソファに沈み込み、虚ろな眼をして紫煙を まるで溜め息でもつくように吐き出したのだから。 咥え煙草のままグラスのバー…

uncle and nephew

ずっと、小さい頃からその背中を追いかけ続けていた 実の父よりも近い存在として。 もっとも、元総監の祖父の覚えめでたき 一部からの憎まれようも評価の裏返しの 押しも押されぬ特捜課の名刑事である父よりは 「街の顔役に毛が生えた程度」の叔父の方が ま…

セーラー服を脱がさないで

温暖化のせいかそうでないのか、とにかく年々暑くなっているような気がする。 最近じゃ『真夏日』なんて言葉じゃ間に合わなくて『猛暑日』などと呼ばれるくらいだ。 この調子では『熱帯夜』のさらに上級カテゴリーが生まれそうでぞっとするが 問題は真夏だけ…

gynandromorph

うちのおひぃさまは「虫愛づる姫君」であらせられるようで 夏になると近くの街路樹や小さな公園 さらにはちょっとした遠出になるが虫の宝庫である 戸山公園まで、網を片手に幼馴染みどもと駆け回る毎日だ。 もちろん、教授の屋敷は言わずもがな。 昨年なんて…

Tom Boy or Nancy Boy?

まだ二人の間に秀弥くんが授かる前の話。所轄の署長という立場も、一課や特捜と比べたら閑職かもしれないけれど 一人の肩に背負い込む責任たるやそれとは比べものにならないもので いくら定時で上がれるとはいえ、退職したばかりの父に実家に呼び出され 拝聴…

as easy as a dog

公園デビュー、なんて言葉があると知ったのはいつぐらいだろうか。 おそらくまだその頃は、自分がその当事者になるなんて 夢にも思わなかったはずだ。 でも、まさかまさかの有為転変でこんなあたしでも ママになることができたのだけど、 公園の前にデビュー…

Good Night, Babies

あの小さかったひかりも3歳になって そろそろベビーベッドじゃ収まりがきかなくなってきた。 かといってうちの場合、諸般の事情から『川の字』とはいかず 贅沢ながら子供部屋に一人で寝かすことになったのだが、「じゃあ、行ってくるね」それ以来始まった、…

dog tag

そういえば、あいつの持ち物には軍用品が多かった。 ライターの中で一番愛用しているのは古いシンプルなジッポーだし ガレージのハーレーも第二次大戦中ではアメリカ軍で採用されていたものだという。 仕事で遠出するときに荷物を入れていく、頭陀袋としか言…

シティーハンターの敵

16:41 ターゲットを確認「じゃーねー」 「See you tomorrow!ってシュウヤ、 何でお前が帰りも一緒なんだよ!」 「しょーがねーだろ、最近二人とも忙しいんだから」校門で同級生と別れる。 女子生徒一人と一緒に新宿駅方面へと向かう。 ターゲットの自宅は…

1.8/始まりの終わり

お正月というのはいったいいつまでなんだろうか。 三が日が終われば世間はもう通常営業だし 7日までを松の内ということもある。 鏡開きもだいたいそれくらいだろうか。 でも、あたしにとって お正月が終わっちゃったなぁと思うのは どんど焼きでお飾りを火…

大きな子供と小さな子供

最近、香がやけに冷たい。 理由だったら嫌というほど思いつく あちこちで飲んではツケを溜めてきたり そのくせ依頼を美人からじゃないといって断ったり。 そんなことは昔も今も変わらないのだが じゃあ何で今、あいつがやけに つんけんしているかといったら…